その91
 
WTO加盟で変わるか、「何でもあり」の中国


日本から製品や部品を中国に輸出する際に、@香港経由で送る、A上海へ陸揚げする、B北京へ直接送るなどいろいろなルートがあるが、これまでは関税が安く、通関を早く行うなど条件の良いルートを選択することができた。必ずしも毎回期待通りの条件で通関できない場合もあるが、現地の情報を良く把握して発送すれば、それなりの見返りが期待できる。中国国内には、法律や規制の変更などは、「内部文書」という通達があるが、その通達が下部に連絡されるまで遅れたり、伝わらなかったりして地域による差が生じるからである。幹部が海外へ出張している場合には、通達書類も滞り、実施が遅れることがある。条件が悪くなる通達では、その情報をつかんで実施が遅れそうなところを選んで発送するというわけだ。このような単純な理由だけでなく、もっと複雑に事情の絡んだ話も裏にはある。

しかし、2001年12月11日の中国のWTO加盟により、これが大きく変わりつつある。WTO加盟は、中国に透明性を要求している。中国全土へ指示徹底されるのはまだ時間がかかりそうだが、「内部文書」という"社外秘"に相当する文書は開示される。つまり、開示されるとIT化により、これらの文書が同時にホームページでも掲示され、同時にその法律や規定や通達が有効になる。従来のように、地域や担当者により、法律や規定がコントロールされることがなくなる。もちろん、文章の解釈の仕方が、地域により少々異なることは発生するであろうが基本的には共通になる。
今まで、地域によってよい条件情報を入手できたのは、その関連部門の担当者と良い関係にあり、「内部文書」を他社より先に把握できたからである。これで今まで有利な情報を得てきたところは、これが利用できなくなる。WTO加盟でほとんど全員が公平になり、特定の人に有利さがなくなる。中国の相手先と新しく商談を始める企業にとっては、公平さは大きい味方である。

WTO加盟により、このほかにも規制が緩和されるなど変わるものに、次のようなものがある。

1 小売業界への規制緩和など経済活動の規制緩和
  特に、外資に対する地域制限、店舗数制限、出資制限は、3年以内に撤廃
  が予定されている
2 「にせもの」に対する規制強化など知的所有権の保護に対する問題
3 商社や銀行に対する規制緩和

内情を知れば知るほど、中国は節税(脱税)、通関の手加減や不公平、偽ブランド(コピー商品)の横行など、「何でもありの国」という印象がある。しかし、いまそれがWTO加盟と共に大きく変わることが期待さていれる。特定の人脈や関係を持つ個人に有利な国ではなく、誰にでも公平な中国、他の先進国と同じようにルールを守る中国に変わろうとしている。
中国は北京でオリンピックが開催される2008年までに、米国と肩を並べる経済大国になるという目標が掲げられている。今、いろいろ抱えている矛盾や不公平の改善達成目標の実現は、2008年までかかりそうな気がしてならない。しかし、「何でもあり」の中国だけは、もっと早く改善を達成して欲しいものである。

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