その90
  
日本製、韓国製、台湾製、中国製
    加工機械を使い分ける中国    


最近、中国で製造されるプラスチック製品や板金加工製品の品質レベルが非常に向上している。中国へ進出した日系企業でも、現地で部品や材料を調達する割合である現調率はすでに50%を超えたといわれる。中国企業から欧州へ輸出される家電製品では、プラスチックの原料や特殊なエレクトロニクス部品を除いて、ほとんどが中国国内で製造される部品で作られるようになった。そのためにコストも非常に安くできる。むしろ、中国国内企業でも、現調率を高くしないとコスト競争にも敗退する事態に追い込まれる時代になった。

日系家電メーカも、中国国内にある優秀な家電メーカを探し出して、エアコン、冷蔵庫、洗濯機などをOEM生産するところが増えている。電子レンジの製造で有名になったギャランツでは、100を超えるモデルを生産し、その製品は世界の120カ国へ輸出されている。OEM生産を含めると世界市場でのシェアーは40%近くになり、2002年末には、50%を超えるであろうと強気の予測である。
板金プレス機械やベンディングマシン、射出成型機がそれぞれの工場建物の中に数十台づつところせましと並びフル稼働している。内部に使用するトランスなどの主要部品は、鉄心になる板金からコイルの巻線まで自社で一貫生産をしている。そのために小回りがきいて、市場の要求に対して直ちに対応できる体制になっている。ギャランツはそのほんの一例であるが、ほかの工場でも同じようである。アイロンやヘヤードライヤーにはヒータが必ず使われるが、電線類やニクロム線を他社から購入し、自社で自動巻線機を開発し、すべて自社で部品化する。必要なプラスチック成型品も自社に成型機を備えて、OEMの要求に応じられる体制をとっている。

これらの製品に使用されるプラスチック製品や板金加工品の"できばえ"は、工作機械設備を使いこなす技術や技能にもよるが、ほとんどは金型とその金型を製造する工作機械で決まる。家電製品メーカは、金型やそれを製造する機械を、仕上がり具合や要求される精度でうまく使い分けている。品質レベルや寸法精度の高いものが要求される場合には、日本製やドイツ製の工作機械を使う。次に良いのが、台湾製や韓国製であり、中国製の機械が続く。
従って、製造する製品の要求精度や製品の要求される"できばえ"によって、工作機械や金型を使い分ける工夫をする。たとえば、天井に設置する大型扇風機のベースは、あまり制度を要求されないので中国製の工作機械を使い、金型も自社で製造したものを使用し、非常に安く仕上げる。最近人気の携帯電話のケースは、小型で高い精度を要求されるために日本製の工作機械でつくる。金型も日本製や日系企業出製造したものが多い。

当然、樹脂成形機も、日本製、ドイツ製、台湾製、韓国製、中国製と使い分ける。使い分けを区分けすると、ポリバケツなど日用品や一部の家電製品は、中国製のプラスチック成型機で十分である。カメラや小型電気機器は、台湾、韓国製を選択する。そして、精密さを要求される日本などへの輸出品は、ドイツ製や日本製になる。しかし、最近は、台湾製や韓国製の機械だけでなく、中国製の機械の技術レベルも向上し、差も小さくなりつつある。それに日本製の工作機械類は価格が非常に高い。従って、日本で使用された中古品を購入することもある。台湾製や中国製の成型機械も技術レベルが向上し、日本の成型機械のレベルに近づきつつある。バリ取り工程や修正工程を追加して使っている。これからどんどん台湾製や韓国製そして中国製の工作機械や金型に置き換えられそうである。

金型を製造する際に使用する放電加工機も、中国製のものが製造されている。福建省のある運動靴のメーカでは、中国製の放電加工機を使って製造した金型で十分という評価である。靴の製造にはそれほどの高い精度も必要なく、比較的安いコストで仕上げることが優先される。単価の大きくない運動靴では、これで十分なのである。このようにして、日本の企業が欧米製の工作機械や放電加工機を見ながら改善を加えてきたように、中国企業では、販売金額をあげ、更に投資をし、その製造技術能力を着々と高めている。戦後日本の企業が実践してきた姿を、今、中国の各地で見ることができる。

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