経営・組織・個人の新たな関係構築について 
−労働力流動化時代の組織−

 その5 
 会社は どんな人的資産に、どれだけ給料を払うのか

 4つの流動人的資産

  「期待収入」と自分が設定した生活費、ローン、貯蓄等の「経済的予想支出」との間では、バランスがとれていることが好ましい。もちろん5年後についても同じです。
  それでは「期待収入」は、何で稼ぎ出されるのでしょうか。昨今企業は、能力や成果による処遇人事制度を志向しています。
 そこでここでは
、「個々人の『期待給料』としての稼ぎは、成果を産み出す能力としての『人的資産』によって生み出される」と仮定することにします。
 
 ところで、この「人的資産」をどのような内容のものとし、それらをどう評価し、どの程度の給料を支払うことにするかは、本来的に、企業の側が自らの判断で決定するべきものです。また期待する「人的資産」は、企業の業種・業態や経営方針や職位などによって本来的に多様なものです。
 そこで一つの例ですが、今日企業が必要とし、評価すべき「人的資産」として、次の「2種類の4つの能力資産」を設定してみました。これらの「4つの能力資産」のより具体的内容と、それぞれをどの程度の「ウエイトづけ比率」で重視するかも、まさに企業側が主体的に決定すべきものです。

  2種類の「4つの能力資産」

  (1) 円滑で正確に業務を遂行するために必要な「専門知識・技術技能」
  (2) 質的に高い成果を上げるために必要な頭で考え、判断し、行動に移す
    力としての「企画・提案力」、「指導力」、「実行力」。

  ところで、これらの4つの「能力資産」を、企業の決算時の財産の状態を表す「貸借対照表」にならって、「人的流動資産」と命名してみることにしました。
 
「給料は人的能力資産よって稼がれる」として、「給料は、2種類の『4つの人的資産』によって稼がれ、それぞれのウエイトづけ比で按分される」と仮定しました。
 個々人が現時点および5年後に、どの程度の「4つの流動人的資産価値」を持っているか、あるいは目標とするかは、次の手順で試算することができます。

  能力資産の試算手順

  (1) 先に示した「キャリア路線の選択」に従って見込める「平均的な期待
   給料」を確定する。
  (2) 4つの能力資産の内容とそのウエイトづけ比「a:b:c:d」を確
   定する。
  (3) 4つの能力資産について、A〜Eの5段階で評価し、現時点での自己
   査定値および5年後の目標査定値を確定する。
   
   査定値は別途定める「能力資産自己査定基準」によって、
   1.5、1.25、1.0、0.75、0.5のいずれかとする。
  
  (4) 流動人的資産は、次の4つの能力資産の総和とする。
   専門的業務知識・技術技能資産
    =給料・{a/(a+b+c+d)}・査定値
   企画・提案力資産=給料・{b/(a+b+c+d)}・査定値
   指導力資産=給料・{c/(a+b+c+d)}・査定値
   実行力資産=給料・{d/(a+b+c+d)}・査定値
  
 
固定人的資産

 
固定人的資産は、給料以外に稼ぐことが可能な「有形固定人的資産」、「人的投資等」です。「有形固定人的資産」の価値については、世の中で評価されている基準によるものとし、現時点および5年後の価値を絶対金額で査定します。
 現在投資が進行中あるいは今後新たに投資を行う予定の「人的投資等」の価値については、現時点および5年後に見込める絶対金額で査定します。


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