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 BMM【Belhyud Mail Media】NV No.140

  2013.7.31発行
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原発被災自治体の利益を擁護する交渉に、
国を引き出すには幾多の困難が予想される!

今回の地震、津波が1000年に一度の惨事であったことは事実です。日本の原発行政に大きな問題があったことも事実です。そして、いくら悔やんでも原発事故災害が発生してしまったことも事実です。しかし、我々が、東電と国に立ち向かい、いかに自立し、生活再建を図るか、いかに町の復興再生に取組むかは、これから始まる戦いです。

つくばでの「7000人の復興会議」でスピーチされた岩崎駿介さんは、近著「地球に生きる」で、次のような趣旨の指摘をされています。

原発は新自由主義体制における「先進国と途上国」、「都市と農業」、「強きものと弱気もの」という対峙の中で、経済的優位を保持するための武器として位置付けれられ、フクシマの原発被災者は、その犠牲者である。フクシマ問題の解決につながる道筋の一つとして、日本の先進工業国としての今後の基本的方向の中で、いかに考える市民、行動する市民を育て、権限を分散できるかです。

福島の方々にとっては、第一に生き生きとした生活再建、生きる生きがいを含めた経済的自立の問題、第二に、自分のたちの過酷な体験の代償として、この世から原発をなくすこと、このことを成し遂げねば、皆さまの悔しさは解消できなません。


国と対等以上の立場で協議できるだけの「武装」を!
双葉町では、この6月に「被災町民の声」を反映させた「第一次復興まちづくり計画」が決定されました。「第一次計画」からは、様々な思いや要望を持つ町民の立場に応えて、この4年間で取り組むべき「7つの基本的課題」を読み取ることができます。

国の「福島復興再生基本方針」を読むと、被災者の創意工夫、意見、要望を尊重して、被災自治体と協議して施策を実行していくとあります。国策の犠牲になった被災者、自治体は、国と対等以上の立場で協議できるだけの「武装」をしなければなりません。

あらためて「7つの基本的課題」を町民全体で確認し、再吟味し、共有化しあうとともに、町民の意見、要望を組み込んだ「実施計画」を作成し、県や国の官僚と協議し、「実行マスタープラン」を町全体、国全体で共有化しあうことこそが、「明日の安心と希望」につながります。

しかし、この一連の道筋は、私どもにとって未知の世界です。

ベルヒュード研究会で、川添雅仁さんからも官僚との付き合い方についてアドバイスがありましたが、岩崎さんからも「地方自治の重要性を感じて、横浜市役所に入り、10年働いた経験から」として、次のような趣旨の指摘を戴いています。

「地方自治」がいかなる困難に直面しているかを知らなければならない。その身近な事例として、福島県の矢祭町は町村合併を拒否し、すべての老人を含む、村人のすべてを動員して、素晴らしい村を作り上げたが、国の嫌がらせ、内部分裂などの障害にあって、今でも健在だとは思いつつ、後退を余儀なくされているように感じる。世の中に「地域復権」の機運はあるが、状況的にはグローバリゼイションにしたがって「地域自治」は後退している。

双葉町にとっても、相当の覚悟が必要だ。放射能濃度の問題に加えて、地域の決定をつぶすという、社会的な仕組み、歴史的な方向性などの問題がある。国は、本来「地域」の利益を代表する機関であってしかるべきだが、歴史的には「地域に敵対する機関」として機能して来た。地域の利益を擁護する交渉に、国を引き出すには幾多の困難が予想される。困難に立ち向かう高度な「戦略」を練り上げなければならない。

しかし、国は建前上かもしれませんが、「被災自治体と協議する」としています。

例えば、環境省は、2012年1月に公表した除染計画で13年度中に除染を完了するとしていました。しかし、遅れに遅れています。浪江町や富岡町は手つかず、双葉町は実施計画すらできていません。こうした現状を踏まえて、環境省は各自治体と協議し、要望に沿った形で「除染実施計画」をつくり直したいとしています。

現実には双葉町は政争が原因して、国と協議の場すら持てないでいます。確かに、原発被災自治体の利益を擁護する交渉に、国を引き出すには幾多の困難が予想されますが、先ずは、手ぶらでなく、せめて自前の「復興まちづくり実施計画」を持って協議の場に臨んでほしいと思います。

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2013.7.31発行
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  【発 行】 ベルヒュ−ド研究会
【編 集】 井 上   仁  

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