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 BMM【Belhyud Mail Media】NV No.105

  2010.4.2発行
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中国ビジネスにおける
日本版6シグマ

4「5S」による
 経営理念と方針共有化の環境づくりの重視
今日の中国では、「低コスト労働力の調達」が経営の「決め手」にはならなくなっている。既に「A社」では、「中国にあって部品内製から製品組立まで多岐にわたる複雑な業務を効率的に遂行できる体制がつくれなければ、目標利益が保障されない」という段階にきている。
各部門において、中国人社員が中心になって、「人、モノ、カネ」の面から「改善課題を設定し、解決に取り組み、無駄を廃し、成果を出す」という、きめ細かいマネジメント体制がつくれるかどうかが、経営の決め手になっている。

こうしたマネジメント体制をつくり上げていく上で、「A社」としての重大で緊急な問題は、日本人、中国人社員を問わず、「自分たちの力で利益を生み出すことができる、コスト競争力のある会社にしていかなければ、会社の存続自体が危うくなる」という危機感をいかにして持ってもらうかであった。
そこで、第一に取り組んだことは、経営トップの語録「地球人として働こう」をもとに、「A社」としての「経営理念と経営方針」をわかりやすく見直し、中国人社員、日本人社員全体で共有化しあい、「経営トップと組織全体との一体化」を図ることであった。
第二に取り組んだことは、目先の不満や不平に捕らわれることなく、中国人、日本人の枠を超えて、「コスト競争力」をつけるために、先ずは「自分たちの業務の無駄や無理、失敗、不正をなくしていこう」とする、業務への取り組み方を革新していこうとする気運づくりであった。
この「機運づくり」のきっかけにしたのは、社員全員参加の「5S」活動であった。理屈を超えて、4S「整理・整頓、清掃、清潔」による職場環境の美化運動を通して、「A社」としての価値基準、行動基準、評価基準としての「5番目のS(躾)」を明確にし、その遵守の徹底を図るための環境づくりから始めなおすこととした。

5「4つの経営利益」の把握と管理
「経営理念と方針の共有化」と「業務革新」のための「5S」による「環境づくり」とともに、次に取り組んだことは、3つの事業部門別、各業務部門別に中国人社員が中心になって1ヶ月単位で業務に取り組む計画や結果を「数字」で評価できるようにしようとしたことである。

「決算数字」の確定が翌月半ばになることや、現場にとって「決算数字」から自分たちの業務への取り組みの実績をきめ細かく把握することは一般に困難である。
そこで、現場の業務管理の視点から、特に、「中国ビジネスの経営においてこだわるべき『利益』は、次の『4つの経営利益』」である」として定義し、それぞれについて、現場の業務を通して「数字」で計画をつくり、「数字」で結果を管理できるようにした。

@経営利益@
  =「組立製品売上高」
  −「外注部品・内製部品材料発注高」
  −「部門(営業、開発、金型、部品、組立、生産管理)経費」

A経営利益A
  =「組立製品売上高」
  −「外注部品・内製部品材料入庫高」
  −「部門(営業、開発、金型、部品、組立、生産管理)経費」

B経営利益B
  =「組立製品売上高」
  −「外注部品・内製部品材料投入高」
  −「部門(営業、開発、金型、部品、組立、生産管理)経費」

C経営利益C
  =「組立製品売上高」
  −「売上部品原価」
  −「部門(営業、開発、金型、部品、組立、生産管理)経費

「経営利益@」の把握は、月平均で「入金>出費」を目指し、常に出費を入金の範囲に抑えることがねらいである。特に、内製部品、組立部品の生産計画に対応して、外注部品、内製部品材料の発注高を決め細かく管理しようとするものである。
「経営利益A」の把握は、現実的に「入庫高=支払高」という見方に立って、キャッシュアウトを極力抑えるという「キャッシュフロー」をより重視した経営管理を目指すそうとするものである。ここでは、「部品・材料」の発注において、「必要な時に必要な分だけを発注し、まとめ発注をしない」という原則の順守を重視している。
「経営利益B」の把握は、実際に消費した部品・材料が実際のキャッシュアウト分に相当するという見方に立っている。製品の組立ロス、部品の材料ロスを小さくするための「歩留管理」、部品や材料の紛失や盗難防止、さらには無駄な在庫を持たない「在庫管理」を重視した経営管理を目指そうとするものである。
「経営利益C」は、通常のPLでの営業利益である。現場の管理レベルのアップのために、決算上の営業利益を自らの手で把握、確認できるようにしようとするものである。ただ、詳しくは後述するが、営業利益を把握するためには、部品、製品別に材料コスト、部品コストを把握できるシステムが不可欠である。現場の管理業務としてもっとも大事な部品と製品のコスト管理ができるシステムを準備することによって、結果的に営業利益も把握できるようにした。
「3つの経営利益」に共通した「経費」については、全部門の人件費、残業代、修繕費、諸費、減価償却費等のすべてを3つの事業部門別に割り振り、その実績推移から「コスト管理課題」を具体的に絞りやすくした。

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    BMM【Belhyud Mail Media】 NV No.105
2010.4.2発行
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  【WEB】 http://www.belhyud.com/0.htm
【MAIL】 jin-inoue@belhyud.com
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    【発 行】 ベルヒュ−ド研究会
【編 集】 井 上  仁

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