原発被災地
双相地区の近世史B
          
 

「国策原発」の犠牲となったて
再び故郷を追われ、離散、流浪の生活となった故郷の人々

 天明の飢饉で双相地区に移住した私たちの祖先である真宗門徒移民は、この地でなりふりかまわず働くことで田地田畑を拡大し、土蔵をいくつも建てる等成功を収めました。また、二宮尊徳の「御仕法」に精励し、今日の豊かな故郷の土台を築くことに貢献しました。福島県双相地区が裕福な地になり、私どもの現在があるのは、こうした先祖のおかげです。 
 今日、人々は「国策原発」の犠牲となって、先祖伝来の豊饒の地を追われ、流浪、避難の生活を余儀なくされることになりました。故郷は無人の地となり、祖先達の働きを讃える「報徳碑」は深い草に隠れています。
 二宮尊徳の「御仕法」を進言し、実際の指導にあたった富田高慶の孫の富田高明は、井上が進学した高校の校長を務めておられました。井上の祖父井上衛門の祖父吉衛門たちが富田高慶の指導のもと、相馬藩標葉郷の農村再興に関わったという縁もあり、大変な薫陶を戴きました。
 原発被曝で故郷を失い、汚染され、荒廃していく先祖伝来の田畑の光景を目の当たりにし、悲嘆にくれる皆さんの姿を見て見ぬふりはできません。故郷を棄てるわけにはいきません。何百年かけてでもという思いで、私たちも祖先がつくった我が故郷の再興へ、確かな一歩踏み出し、次の世代にバトンをつながなければなりません。



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