福島第一原発の危機管理


D「COPQ]という概念の視点から

原発の危機管理では、想定外の地震、津波の襲来があっても確実に核融合が制止し、冷却システムが正常に働く状態を保つというのが最低ラインの目標です。福島第二原発、女川原発はこの目標は達成されています。福島第一原発では、この冷却システムに対する電源確保という危機管理がゼロに近いレベルであったようです。

福島第一原発は、2006年に出された地震対策の見直し指針に対する取り組みが後手に回っていたという報道もあります。
また、30日、政府は津波対策として、@原子炉や使用済み燃料プールの冷却に使う電源車や消防車などの配備、A緊急時の対応を定めた手順書の策定、B手順書に基づく緊急対策訓練の実施を指示しました。原子力委員会も、福島第一原発の事故について、東電の事前、事後の一連の対応について、「きちんとマネジメントされていれば防げたと思う」との見解を示しています。

これらの意味でも、想定外の津波だったということではすまされず、東電と国、特に保安院の責任は免れないものだとと思われます。

「6シグマ」には、COPQ(Cost Of Poor Quality)を極小化するという管理概念があります。製品やサービスの品質、コスト、納期等についてのトラブル発生で外部に放出れる「無駄なコスト」、「機会損出」の総額が「COPQ」です。
この「COPQ]には発生した不良分そのものの直接的な損失だけでなく、発生した不良の後始末費用、補償等の間接的なコスト、不良が発生したために発生する機会損失も含まれます。不良発生によって失った信頼を回復するためには大変な時間と費用がかかります。これも「COPQ」です。
「COPQ」を管理するということは、経営、企画、開発、技術、製造、販売、管理のすべての部門が一体となって連携し、問題を解決し、上に述べた「COPQ」の総額を極小化しいこうというものです。

3月30日、東電の会長が記者会見し、経営責任について「思うところがある」と述べていますが、事態の収拾、損害賠償、電力の安定供給に向け経営の責任は計り知れません。想定される「COPQ」がどれだけの額にのぼるか具体的な数字はまだまだ見えてません。この「COPQ」がいかに巨額なものになるかが、福島第一原発に対する東電と保安院のマネジメントがいかに重大なものであったかを物語っていると思います。

                        
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